昔から多くの日本人に愛され鑑賞されてきた菖蒲。
しかし、菖蒲もあやめもかきつばたも見た目がそっくりなため、違いを見分けるのが難しい花です。
違いは咲く季節だけではなく、花びらや葉のかたちでも見分けることができますので簡単な見分け方をご紹介します。
今回は、花菖蒲とよく似たあやめやかきつばたとの違いや花言葉、それぞれの由来についてご紹介します。
菖蒲と花菖蒲の違い
菖蒲湯でお風呂に入れる「菖蒲」と、梅雨時にきれいな花を咲かせる「菖蒲」は全く別のものだということをご存じでしたか?
菖蒲湯としてお風呂に入れるものを「菖蒲」、きれいな鮮やかな花が咲くものは正確には「花菖蒲」といいます。
葉の様子がよく似ていますが、実は学術的な分類も異なり、全く違う植物になります。
・「花菖蒲」…アヤメ科の植物 梅雨時に様々な色の花を咲かせます
菖蒲園できれいに花を咲かせている花菖蒲を見て、その葉をお風呂に入れれば菖蒲湯になると間違えがちですが、2つとも全く違う科の植物だったのですね。
花菖蒲の歴史
花菖蒲・あやめ・かきつばたはすっとまっすぐに伸びた茎の上に、きれいな花を咲かせる凛とした姿から、江戸時代には武士から庶民まで多くの人々に愛された花です。
特に花菖蒲はその美しい姿から、800年前ごろから鑑賞されるようになり、500年前の江戸時代には、品種改良などの栽培が盛んに行われ、武士から庶民まで幅広い人たちに愛される花となりました。
「菖蒲」(ショウブ)と武道・武勇に重んじる言葉「尚武」(ショウブ)が同音だったことから、特に武士に愛され、武士を中心に品種改良が盛んに行われました。
花菖蒲は梅雨の長雨の頃に咲き、寿命はたった3日間しかない花です。
その短い間に花は雨に濡れ、日々変化していく美しい様子を「花が芸をする」といって、江戸時代の庶民は粋な梅雨の風物詩として楽しんだそうです。
花菖蒲・あやめ・かきつばた それぞれの分類と名前の由来は?
分類・名前の由来
花菖蒲・あやめ・かきつばたはすべてアヤメ科アヤメ属になり、花もよく似たものが咲きます。名前の由来は下記の通りです。
・あやめ…花びらの根元にある網目の模様が由来
・かきつばた…花汁をしぼって衣に染めていたことから、「カキツケハナ掻付花」「カキツケバナ書付花」から変化したという由来
花菖蒲・あやめ・かきつばたの見分け方
3つの花は学術的にも全く同じですので、当然、咲く花もとてもよく似ています。
「何れ菖蒲杜若」(いずれあやめかきつばた)という慣用句があります。
どちらも優れていて甲乙つけがたいという意味ですが、似ているために見分けがつきにくいという意味もあります。
慣用句でも用いられほど、人々に間違われやすいという花ということですね。
見分けるポイントは下記の4点です。
・生育地
・葉の形
・開花時期
花びらの模様で見分ける
・あやめ…花びらの根元に大きな網目の模様
・かきつばた…花びらの根元に細長い白い模様
この方法が一番見分けやすい方法です。
花菖蒲は江戸時代から品種改良が盛んに行われ、愛好家たちの好みに応じて様々な色・形が生み出されてきましたが、花びらの根元の細長い黄色の模様は変わりません。
生育地の違いで見分ける
・あやめ…乾地を好む
・かきつばた…湿地を好む
あやめは畑のような乾燥した地で生息し、かきつばたは水辺のような湿地でしか生息しませんので、見分けるポイントの1つになるでしょう。
葉の形の違いで見分ける
・あやめ…花菖蒲に比べて葉が細く葉脈もほとんど目立たない
・かきつばた…花菖蒲に比べて葉は幅広で葉脈も目立たない
開花時期の違いで見分ける
・あやめ…5月中旬
・かきつばた…5上旬
菖蒲・あやめ・かきつばたは一見とてもよく似た花ですが、違いがいくつかあるので、見比べてみるとおもしろいでしょう。
花菖蒲の見どころ
菖蒲園へ足を運ばれる際は、ぜひ以下の点も押さえると花菖蒲の鑑賞がより奥深いものになるでしょう。
花菖蒲の鑑賞は雌しべの立ち姿が最大のポイント
花菖蒲は花弁の中央に位置する雌しべが、他の花に比べて大きく、花全体の美しさを決める要となっています。
中央に立ち上がった雌しべと、他の花びらとのバランスに、作り手の美意識が込められていますので、ぜひ、足を運んだ際にはよく観察してみてください。
園全体のグラデーションに注目
全国に多くの菖蒲園がありますが、花菖蒲発祥の地として有名なのが葛飾区の堀切菖蒲園です。
園ではわざと様々な品種をばらばらに植えることで、群正の美しさを演出しています。
園全体が作り出す美しい色調も見どころの1つですので、ぜひ注目してみてください。
花菖蒲・あやめ・かきつばたの花言葉は?
・あやめ…よい便りを待っています、よい便り、使者
・かきつばた…幸運、幸せはあなたのもの
いずれも幸せや希望、優しさを表していて、それぞれの美しい花の様子にぴったりな花言葉です。
あやめとアイリスは別物?
こちらの2つもよく似た花を咲かせるので、混同しやすいですね。
結論からいうと、あやめとアイリスは別物です。大きな違いとして、あやめは日本古来の品種であり、アイリスは地中海原産の洋種という点です。
アイリスはギリシャ語で「虹」を意味し、その名の通り色が豊富なのが特徴です。
あやめは紫かまれに白の花を咲かせる程度の色の少なさです。
一般的にアイリスというと、ジャーマンアイリスかダッチアイリスを指すことが多いようですね。
ジャーマンアイリスの大きな特徴として、花びらの根元にひげがあることから「ひげアイリス」、花の色が豊富なことから「レインボーリリー」とも別名を持つ華やかな花です。
あやめにはもちろん「ひげ」はありませんので、見分ける際のポイントになるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回の知識をふまえて菖蒲園へ足をはこんでみると、今までとはまた違った散策が楽しめそうですね。
「足首の埃(ほこり)たたいて花菖蒲」
小林一茶が花菖蒲を見るために、足元を汚しながら鑑賞してまわったと詠むほど日本人の心をとらえ、愛された花菖蒲。
先人たちが残した風流な生活にならって、ぜひ梅雨の季節に雨に濡れた可憐な花菖蒲を鑑賞してみたいですね。
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